こんにちは、トンセイです。
今日は割安株で高配当銘柄でありながら事業への投資を積極的に行っているスカラ(4845)を紹介します。
本ブログで紹介したスカラですが、長期保有としてはあまりオススメしません。なぜなら経営陣がスカラの株をほとんど所有していないからです。
またoteにも書きましたが経営陣が株を所有している割合が高いほうが、企業価値は伸びやすい傾向にあります。最近ではoptimやrizapがいい例です。
スカラの株価

こちらが2019年11月以降のスカラの株価の推移です。コロナショック時に大きく値を下げています。

こちらが上場してからの株価の推移です。
スカラは2001年に上場した企業ですが、今まで一度も株式分割を行っていないようです。
コロナショックの影響で2014年以降では底値の水準です。しかし上場来最安値は2014年2月4日に235円を記録しており、日経平均が今後も下がるようであればまだまだ下がると考えられます。
スカラがどういう会社なのか見ていきましょう。
スカラとは?
スカラは今流行のSaaS/ASPサービスを提供している会社です。同じ東証1部に上場しているソフトブレーンの親会社ですね。ソフトブレーンはSFA(セールスフォース オートメーション)を提供している企業です。
セールスフォースオートメーションとは簡単にいうと営業支援システムです。ソフトブレーンは提供するSFA導入企業が4000社を超えており、国内トップクラスのSFA企業です。
他にもサイト支援・検索サービス、FAQシステム、CMS・CRMサービス、電話系サービスなど様々な事業を行っています。
四季報情報
四季報の情報は下記です。

スカラの直近の動向
直近の動向として2020年6月期第2四半期の決算は売上高前年比+2.4%、営業利益-27%と低調な伸びでした。理由としては下記です。
SaaS/ASP事業の大型案件の受注遅延
カスタマーサポート事業の売上高低下
出版事業における書籍販売の低下

売上に関しては簡単にいうと下記です。
見通しが甘かった
スカラの情報を調べていると下方修正をしている期もそこそこありました。下方修正には注意ですね。
スカラの事業はストック型のビジネスモデルなので契約数が解約数を下回らなければ売上は順調に伸びていきます。
ストック収益は順調に伸びていますが、営業利益が前年同期比−27%になったのは人件費、開発費などの先行投資を行っていたからです。
人材の採用と開発に対する先行投資は評価できます。なぜなら企業の成長には人とあたらしいサービスが必要だからです。
SaaS/ASP事業の大型案件の受注遅延は経営陣の見通しが甘かったの一言です。
営業利益について
各セグメントの内訳です。

この4つが原因で営業利益が下がっています。
本社移転費に関しては来年はなくなりますね。人の採用に関しては企業が大きくなる上で欠かせません。しかし一方で固定費が増えることを意味しています。
開発による追加投資は評価できるでしょう。なぜならスカラの挑戦的な姿勢が感じられるからです。
後述しますが全体的にみても、かなり投資を行っていますね。ストック型ビジネスの売上自体は伸びていますのでコロナショックが落ち着いた来年以降に期待です。
スカラの事業
スカラの事業は大きく次の5つにわけられます。
SaaS/ASP事業
SFA事業
フィールドマーケティング事業
カスタマーサポート事業
その他
SaaS/ASP事業とは?
SaaSとASPは簡単にいうと下記です。
クラウド型のソフト提供とそれを行う会社
身近な例でいうとgoogleドライブやicloudドライブがSaaSで、それらを提供するgoogleやappleがASPです。
わざわざPCにソフトをインストールしなくてもすぐに使えるのがメリットですね。
SaaS/ASP事業のメインのサービスは下記があります。
探す・見つけるサービスの「i-search]

探す、見つけるサービスの文字を見た時はサイト内のgoogle検索でいいじゃんと思いました。なぜならgoogleの検索システムは世界一だからです。
スカラの「i-search」の強みは検索結果に画像を表示し、ユーザーが目的のものを探しやすくなっています。
大手企業を中心に導入社400社以上、マーケットのシェアが15%程度とトップクラスのシェアを誇っています。400社以上と契約していてマーケットのシェアが15%以上あるのは使いやすいのでしょう。
ストック型ビジネスで非常に安定した収益が見込めます。
自動電話応答サービス

クロネコヤマトや佐川急便に再配達の電話をかけると機械が案内してくれますよね。あれが自動電話応答サービスです。
機械が人の代わりをすることでコストの削減もできますし、SMSやLINEとの連携もできます。また24時間365日対応できるのがいいですね。
調べる・問い合わせるサービス
またFAQサービスとi-assistサービスを提供しています。これを導入すると企業にとっては人を採用するコストや手間が省けます。


さらに知りたいことを探しているユーザーにとっても素早く自力で情報を探せます。またi-assistサービスはチャットボットであり、こちらもユーザーが質問した内容について最適な解答を表示するシステムです。
人口減の日本においてはこのようなサービスは不可欠です。なぜなら企業が人を採用するコストや手間が省けるからです。エンドユーザーにとっても最適な答えが表示されるので非常にありがたいですね。
他のサービス
他にも様々なサービスを提供しています。

スカラのセグメント別売上について
スカラのセグメント別売上構成比は以下のようになっています。

キレイに分散されていますね。
セグメント別業績推移です。

どのセグメントも右肩上がりです。
事業別の利益の推移です。

こちらも同様ですね。
以上のグラフをまとめると下記です。
スカラの事業は売上が分散されている
どの事業も右肩上がりで成長している
スカラの事業はキレイに分散されています。事業それぞれに関連性はありますが、分散されているのはリスクを抑えられますね。
またどの事業も成長しているのがみてとれます。注意点として2019年本決算までの資料なので今期分は含まれていません。
スカラを紹介した理由
ここからはスカラを紹介した理由について述べていきます。
ストック型ビジネスであるSaaS/ASP企業であること
意欲的な海外への投資とファンドの設立
行政サービスのデジタル化推進
ここ近年の急激な売上高の伸び
高い配当利回り
割安株
それぞれ順番に解説していきます。
ストック型ビジネスであるSaaS/ASP企業であること
SaaS/ASP事業は株式市場において評価されやすい傾向にあります。またスカラはSaaS/ASP事業の新プラットフォームを構築しています。具体的には下記です。
再利用可能なモジュールをマイクロサービス化
機動性のある開発手法
最新技術の取り組み
様々な連携に加え、完全に内製化されていたカスタマイズ開発を外部委託可能になります。また大型案件の並列開発による開発スピードのアップ、汎用サービスの展開を狙っています。
機動性のある開発手法では業務の効率化を図ります。またブランディングにより高レベルの人材の確保を狙っています。
以上により下期以降の付加価値が高まると予想されます。
2020年度6月期の第3四半期までは大型案件の受注遅れにより売上型があまり伸びていません。しかし東京海上グループのイーデザイン損害保険むけに開発をおこなった「保険見積もりシステム」が2019年のグッドデザイン賞を受賞しています。
この「保険見積もりシステム」も前述した再利用可能モジュールで設計されているはずなので今後の開発に期待ができます。
意欲的な海外への投資とファンドの設立
スカラはソフトウェアの開発拠点としてミャンマー国内で人材の育成を開始しています。なぜなら低賃金でオフショア開発の拠点として有望であり、新しい市場としても魅力的だからです。
この辺りを保険会社と連携し保険とシステムをセットで広めて行く狙いです。オフショア開発との相乗効果が期待できます。
ファンドの設立
他の企業への投資も2020年6月期第4四半期から開始予定です。
ジェイフェニックスリサーチで投資対象のピックアップのモデルは下記です。

これにより選定された対象企業の役員面談を実施し、共に価値を高めていく試みですね。
行政デジタルサービスの推進
行政デジタルサービスの推進とは下記です。
役所で使えるデジタルマイナンバー
実は個人的に一番ここに注目しています。なぜなら今まで役所に行かないとできなかった手続きがオンラインで完結できる可能性があり、全国規模の拡大が見込めるからです。
今まで住民票などをほしい時は色々手続きが面倒でしたよね。今の時代では考えられないくらいです。
スカラは電子国家先進国のエストニアに拠点を置くblockhive社と提携しました。また
地方創世事業を通じて全国の自治体約600団体と取引実績のあるグリットグループホールディングス株式会社(GGH社)を全株式習得し子会社化してます。
コロナショックでも給付金をどのように配布するのか問題になりました。なぜならその人の賃金がどの程度減ったのかを把握するのが大変だからです。
またコロナショックの際に誰がどこで感染したのか把握できない事が問題になっています。なぜなら感染経路を把握しておかないと爆発的に広まるからです。
コロナウイルス以上の強力な感染症に備えるため、人が管理される社会が到来するかもしれません。政府が人を把握する手段としてデジタルマイナンバーを期待しています。
GGH社のもつ強みとblockhive社をかけ合わせて日本の行政にデジタルマイナンバーが広がり、様々な面でシナジーがうまれることを期待しています。
この分析はこちらの証券会社を使っています。
ここ近年の急激な売上高の伸び

2017年6月期に売上高が急増したのは東証1部上場企業のソフトブレーンを買収したからです。通常5%以上の株を保有すると大量保有報告書を出すことが義務付けられています。
この報告書は報告義務発生日から5日以内と定められていて、スカラはこの5日間で株式を40%程度取得し気づかれずに買収に成功したそうです。今どきこんなのがあるんですね^^;
ちなみに当時は同じ東証1部上場企業でソフトブレーンのほうが売上高は遥かに上でした。当時ソフトブレーンの社長だった豊田氏は現在も社長をしています。
スカラはソフトブレーン買収後もM&Aを積極的に行っています。
2020年第3四半期決算

昨対比ではプラスになっています。しかし伸びはイマイチですね。
SaaS/ASP事業
スカラが公表している四半期報告書によるとSaaS/ASP事業についてはストック収益は累積的に増加しています。サービスの導入も増加しており、具体名が書かれていました。
i-search・・・久留米市、佐野市
IVR(自動音声対応)・・・損害保険ジャパン(株)、SOMPOシステムズ(株)
i-ask・・・関西電力送配電(株)、ギグワークスアドバリュー(株)
i-assist・・・北九州市、昭和産業(株)
自動車保険1クリック概算保険料見積もりシステム・・・イーデザイン損害保険(株)
i-gift・・・ダイソン(株)
SaaS/ASP事業における売上収益は3,100百万円(前年同期比3.0%増)となったものの、開発や積極的な人材採用など先行投資を進めており、セグメント利益は218百万円(同64.2%減)となっています。
SFA事業
主力商品でもある「eセールスマネージャー」の販売は堅調に推移し、SFA事業の売上収益は前年同月比4.3%増となっています。しかし教育・コンサルティングサービスはコロナショックの影響で延期や取りやめ等が発生し打撃を受けているようです。
こちらも成長に向けての開発や人材の採用など先行投資を進めています。
売上収益は3,746百万円(前年同期比4.3%増)、セグメント利益は513百万円27.0%減となっています。
フィールドマーケティング事業
こちらは定期フィールドビジネスや人材派遣が主力ですが、コロナショックによりデモ販売の中止などの影響を受けています。
売上収益は3,077百万円(前年同期比5.6%増)、セグメント利益は200百万円(同12.3%減)となっています。
カスタマーサポート事業
カスタマーサポート事業についてはカスタマーサポートコンサルティング業務を受託し、電力小売事業者より総合コンサルティング業務を新規受注しているようです。
また利益率の低いサービスを整理し、利益率の高いサービス提供に集中した結果、売上収益1,680百万円(前年同期比19.0%減)となったものの、セグメント利益は57百万円
(同32.8%増)となっています。
他の事業
他の事業については下記です。
EC事業・・・売上収益725百万円(前年同期比15.7%増)、セグメント利益は58百万円(同5.6%増)
システム開発事業・・・売上収益335百万円(前年同期比3.3%増)、セグメント利益は10百万円(同59.0%減)
出版事業・・・売上収益163百万円(前年同期比32.0%減)、セグメント利益は13百万円(同63.3%減)
投資事業・・・セグメント利益については46百万円(前年同期比60.8%減)
売上高は前年同期比で微増している事業が多いです。しかし営業利益が全体的に低下傾向にあります。スカラはこれについて将来の開発や人材を確保するための先行投資としています。
四半期業績推移

以上をまとめて前年同期比で比較したグラフです。売上高は微減、利益率は大きく低下しており、EPSも大きく低下しています。
コロナショックの影響と先行投資が重なった結果、利益率が低下していると予測されます。
アジア太平洋地域急成長企業ランキング2020の77位に選出
利益率が大きく低下していますが、良いニュースもありました。
Financial TimeとStatistaが共同で調査を行ったアジアの成長企業ランキング2020において、全体の77位(日本では10位)、サポートサービス部門では全体3位に選出された。
同社の2015-2018年の平均収益成長率は、794.6%となっている。
出典:株探
スカラがアジアの急成長企業にランクインしています。売上高の伸びは約800%となっていますが、主な要因は下記です。
M&Aによる買収
またサポートサービス部門では3位に入り、今後に期待が持てます。
高い配当利回り
スカラは新規事業への投資に積極的ですが株主還元にも力をいれています。

2月14日に発表された配当金は1株あたり28円の予想でした。当時と比べて株価は半分近くになっているので4月23日現在で5.63%とかなり高い配当利回りです。
2019年6月期の配当性向は43%でした。
コロナショックの影響で減配も考えられますが、配当金は今後も継続的に増配していく方針を出しています。
スカラは成長企業としても高配当銘柄としても割安株
PER(予)は9.06倍と割安です。スカラはM&Aに非常に積極的であり、また売上高も年々増加しています。
成長も見込めて高配当の銘柄なので投資妙味がありますね。四半期決算をうけて5月18日朝方のPTSでは下落しています。

財務の健全性とキャッフュフロー
企業のお財布事業をはかる財務の健全性は下記です。
財務の健全性
自己資本比率 37.50%
流動比率 203.94%
当座比率 200.43%
自己資本比率は約37%、流動比率と当座比率は200%程度です。自己資本比率が低いですが、スカラはM&Aを積極的に行う会社なのでソフトバンクやライザップと同様に有利子負債を有効活用できます。
流動比率と当座比率は200%とまあまあの水準です。M&Aを行う視点からは問題がなさそうにみえますが歯車が狂うとどうなるかは不明です。
キャッシュフロー

フリーキャッシュフローはプラスですね。大幅な投資を継続していますが、フリキャッシュフローは増加傾向にあるのは心強いです。配当性向からも配当には余裕がありますし、企業として成長が期待できます。
スカラの中期経営計画 COMMIT5000
また2020年第3四半期決算にて中期経営計画 COMMIT5000のフォローアップレポートを出しています。目標としては下記が掲げられています。

具体的に数字で目標を掲げているのは評価できます。
スカラの中期経営計画の土台
スカラは国内だけではなく海外の民間・政府・自治体へのサービス提供を行う計画をしています。スカラは下記を自社の強みとしておりこれを元に展開をするようです。
1.真の課題を探り出す能⼒
2.リソースの埋もれた価値を炙り出す能⼒
3.課題とリソースの最適な組み合わせを提案・実⾏し価値を最⼤化する
能⼒

主力としてはやはりAI/IoT分野です。今後市場の拡大がみこまれていますし、海外にも先行投資をしている部分だからです。SDGsによる負の解決にも触れています。
前述したスカラの強みである3つの能力はそれぞれ次のセグメントにわけることができます。
1.真の課題を探り出す能⼒→価値創造経営支援事業
2.リソースの埋もれた価値を炙り出す能⼒→IT/AI/IoT関連事業
3.課題とリソースの最適な組み合わせを提案・実⾏し価値を最⼤化する
能⼒→社会問題解決型事業
この3つの事業は簡単に言い換えることができます。
1.投資による他企業の支援
2.デジタルID(デジタルマイナンバー)の国内普及、開発プラットフォームの強化
3.遠隔医療事業への参入とデジタルトランスフォーメーション
スカラ発表の資料によると最も具体的に進捗している取り組みはデジタルIDの普及だそうです。これは私自身が最も注目している分野です。
期待が持てますね。転ぶかもしれませんが
デジタルトランスフォーメーションによる地方創生
スカラはデジタル社会が浸透における課題として下記を挙げています。
例えばパスワードです。現代人は様々なサービスを利用しており、一人一人が扱っているID,パスワードは何十個にも及びます。高齢者も多いので扱いきれなくなる問題があります。
また個人情報の収集が楽になることは流出する危険性もあることを意味しており、便利さと安全性を両立させなければなりません。
ネット上での本人確認方法の問題や既存のスマホアプリでは確実な本人確認が不能などの問題があります。
この課題をスカラとblockhive社で連携を行い、解決していくとしています。

前述しましたが、コロナショックでも給付金の配布方法や中小企業の助成金申請による業務の長時間化などが課題となっています。業務の長時間化はなぜ起こっているのかというと書類を1つ1つ手入力しているそうです。^^;
今の時代にFAXで申請書類を受け取り、1つ1つPCに手入力するなど考えらません。
未だにこういった前世代的なことを行っているのが役所です。我々の暮らしを楽にするためにも、PCに入力する単純労働で家に帰れない職員さんのためにも、スカラのデジタルIDをはじめとしたデジタルトランスフォーメーションは普及してくれることを祈るばかりです。
デジタルトランスフォーメーションにおけるスカラの具体的な事例

具体的な事例としては上記が挙げられていました。どれも社会の負を解決する素晴らしいサービス事例だと考えます。

窓口に並ぶ無駄な時間を少しでも減らし、有意義なことに時間を使えるようになるのは歓迎です。


中期計画は様々な上場企業は発表を行っています。しかしここまで具体的に記載してる計画書はあまり見たことがありません。私だけでしたらごめんなさい。
自治体への導入としては、地方自治体600以上取引実績のあるグリッドグループホールディングスの子会社化やブランディングテクノロジーとの業務提携など着実に1歩ずつ進めています。
リスクについて
有利子負債が増えていますが、豊富な現金を所有しています。しかし稼ぎ頭のソフトブレーンの収益が悪化すると財務の健全性が維持できない可能性もあります。
またSaaS/ASP事業はサーバーの稼働やシステム障害のリスクあります。これにより損害賠償を請求される可能性もあります。他には海外事業への投資の性質上、ミャンマーの不安定な政治事情やその他の要因で想定どおりに事業が進展しない可能性もあります。
まとめ
冒頭のように株価は直近の最高値より半分以下になっています。
豊富なフリーキャッシュフロー
積極的なM&A戦略
投資による事業拡大
高い配当利回り
以上のようになかなかいい条件が揃っています。
あなたの人生の参考になれば幸いです。
この分析はこちらの証券会社を使っています。